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茶の間の自由 ~チャンスも経験もいらない~

ビートルズ プログレ ミステリ 近辺の話題と浅い話を繰り出します

大いなる幻影/華やかな死体

『大いなる幻影/華やかな死体』
戸川昌子/佐賀潜
江戸川乱歩賞全集(4)大いなる幻影 華やかな死体 (講談社文庫)
江戸川乱歩賞全集(4)大いなる幻影 華やかな死体 (講談社文庫)


『大いなる幻影』
孤独な老嬢たちが住む女子アパート。突如始まったアパート移動工事と
同時に奇怪な事件が続発。老嬢たちの過去も次第に暴かれていく。

『華やかな死体』
大手食品会社社長の死体が発見され、元社長秘書の男が逮捕された。
事件をめぐり少壮の検事と老獪な弁護士の熾烈な戦いが始まった。



2作品とも、昭和37年度第8回江戸川乱歩賞受賞作です。
この年は当たり年だったようでなんと受賞を逃したのが、
塔晶夫『虚無への供物』と天藤真『陽気な容疑者たち』だそうで。


『大いなる幻影』
まず著者近影の戸川昌子さんが美しい。
後の年齢を重ねたお姿しか知らないので驚いています。

孤独な老嬢たちが住む女子アパートを舞台に、老嬢たちの暗部が
描かれており、ものすごく暗い。
何かが澱んでいる雰囲気でなかなか読み進められません。
前半は独立して各人のエピソードが語られるのみなので、
よけいそのように感じられてしまいました。
さらにはオカルトっぽい現象も発生しているし。
しかし後半よりいろいろな点が繋がっていき俄然面白くなりました。
そして驚愕のラスト。構成の妙といったところです。
物語が混沌としている中で残ページを確認すると
あと”数ミリ”の状態で、どうやって決着をつけるんだろう、
と思いましたが見事に決まりました。
トリック云々は全くなく、どちらかというとサスペンス作品なんですが、
とても面白かった。

『華やかな死体』
あらためて買い求めることはないのですが、
たまに法廷モノを読むと面白いです。
ドラマ『HERO』や『リーガル・ハイ』等で描かれたので
入りやすくなっているのかもしれません。
本書の主人公は検事。という事で検事側からの物語です。
それにしてもこのラストは。
なるほどこれが実際に検事だった作者佐賀潜が
問いたかったことなんですね。
こうなるとは思いませんでした。
但し本作は主人公が全く魅力的でなく、感情移入できないのが残念です。
強くは描かれてはいないものの出世欲が高かったり、
年上の刑事にぞんざいな言葉遣いをしていたり。
構造的にそれらが普通なのかもしれませんが
それをあたかも普通の事として描いているのは
佐賀潜さんがそうだったからなんでしょうか。

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地味ながら充実の2作品です。
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焦茶色のパステル

『焦茶色のパステル』
岡嶋二人
江戸川乱歩賞全集(14)黄金流砂 焦茶色のパステル (講談社文庫)

東北の牧場で牧場長と競馬評論家が殺され、
サラブレッドの母子も撃たれた。
背後に、競馬界を揺るがす陰謀が!?


昭和58年第28回江戸川乱歩賞受賞作品です。
中津文彦の『黄金流砂』と同時受賞となっています。

再読ですが内容はすっかり忘れていて楽しく読めました。
ヒロインよりもその元気な探偵役でもある友人が魅力的でした。
動機探しがメインになってきますが三段構えになっていてますし
意外な犯人の要素も持っておりプロットの妙が味わえます。

ほとんど読んでこなかった岡嶋作品ですがもっと読みたい。

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黄金流砂

『黄金流砂』
中津文彦
江戸川乱歩賞全集(14)黄金流砂 焦茶色のパステル (講談社文庫)

義経北行説にからむ謎の古文書に、歴史学者殺人事件の鍵が?
解読不能の古代文学と格闘する新米記者。
暗号推理の興奮も満喫できる傑作。――


昭和58年第28回江戸川乱歩賞受賞作品です。
岡嶋二人の『焦茶色のパステル』と同時受賞となっています。

義経北行説が出てくるようにいわゆる歴史解釈モノに殺人事件がからむ
それこそ黄金パターンの作品です。
あまり歴史に詳しくなくなかなか手に取らないゾーンの作品です。
でもこの義経北行や平泉の歴史は面白かった。
さらにミステリとしても複数の探偵役が事件を追って交叉していく様など
結構スリリングだったしラストの幕切れも印象に残りました。

今度平泉中尊寺とか行けば興味をもって見られそうです。

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猿丸幻視行

『猿丸幻視行』
井沢元彦
江戸川乱歩賞全集(12)ぼくらの時代 猿丸幻視行 (講談社文庫)
江戸川乱歩賞全集(12)ぼくらの時代 猿丸幻視行 (講談社文庫)


猿丸大夫、百人一首にも登場するこの伝説の歌人の正体は?
“いろは歌”にかくされた千年の秘密とは……。
眼前に展開した友人の悲劇的な死のなぞを解き明かす若き日の折口信夫の
前に、意外な事実が次々に姿を現わしていく。


昭和55年、第26回江戸川乱歩賞受賞作品です。
あまり興味の無い分野なのでどうかとおもいましたがいざ読んでみると
なかなかおもしろい。
しかしここで述べられた説がどのくらい衝撃的な説なのか、あるいは既に
ある程度認知されている説なのか。こういったところについて基礎知識が
ないのでまあなんとなく読みおえた感じになってしまいました。

終盤突然でてくる過去の事件と殺人事件。どうも付け足し感があったり、
現代の青年が薬物で過去の人物(この場合折口信夫)と意識が同期する、
というSF的設定が中盤以降には全く触れなくなったりと、それなら
あまり設定に凝らなくても良かったのではとも思いました。

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本作は暗号も扱っていますがカルダン・グリル法というのを使用してい
ます。これなかなか使えそうですね。(←何に?)



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ぼくらの時代

『ぼくらの時代』
栗本薫
江戸川乱歩賞全集(12)ぼくらの時代 猿丸幻視行 (講談社文庫)
江戸川乱歩賞全集(12)ぼくらの時代 猿丸幻視行 (講談社文庫)


「栗本薫は二十二歳、みずがめ座。某マンモス私大の三年生で、ロック・
バンド『ポーの一族』のキーボードとボーカル担当―。バイト先のKTV局
内で発生した女子高生連続殺人事件に巻き込まれ、バンド仲間の信とヤス
ヒコとで解決しようとするけれど…」。
当時の若者たちの感覚や思考を背景にして、時代を先取り、巧みな構成と
若々しい文体によって推理小説界に新風をもたらした、話題作。


昭和53年、第24回江戸川乱歩賞受賞作品です。
私はけっこう古い人間なのでここでの”若々しい文体”自体がどうも
あいませんでした。特に舞台がテレビ局なのでなおさらか、登場人物達の
言葉使いが軽すぎてダメです。本作では”大人”として批判される立場の
古い刑事達の会話の方がしっくりきてしまいます。
どうも昔から若者VS旧体制の構図や”大人はわかってくれない”的なもの
が苦手なのです。

もちろん本作品もそのような設定を設け、そのための文体であることは
わかっているのですが。

そんなせいか中身の感想も書けずすみません。

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殺人の棋譜


『殺人の棋譜』
斎藤栄
江戸川乱歩賞全集(6)天使の傷痕 殺人の棋譜 (講談社文庫)


日本将棋連盟所属の河辺真吾八段が、「最高位」挑戦者決定戦に勝利し、
タイトル保持者の名人との対局が決まった。が、河辺を襲った突然の悲
劇―三歳の愛娘・万里が誘拐されたのだ。神奈川県警・須川刑事指揮の
もと、犯人逮捕に向けて万全の態勢で臨むが、予想外の方法で身代金を
奪われ、万里の行方も不明。最悪の事態の中、最高位戦第一局が始まっ
た…!?

昭和41年、第12回江戸川乱歩賞受賞作です。

斎藤栄さんについてもお名前は存じ上げてはいますが多分読んだことな
かったように思います。イメージとしては量産型の書き手。
失礼しました。

本作は本格推理ではなくサスペンス。誘拐犯は早いうちにわかりますが
そこからの展開がうまい。トリック云々タイプでは全くないのですが、
衆人環視からの犯人消失なんてものもあったりします。
誘拐事件にさらに裏の出来事を加えているプロットは大変面白かった。

だけどなぜ『殺人の”棋譜”』なんだろう。将棋の対局場面が描かれて
はいますがこのプロットでの特別な意味合いはありませんでした。
当時の乱歩賞選考委員の選評ではこの大局場面については実は高評価な
のですが。
私の読みがまだまだ浅いのか。

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天使の傷跡

『天使の傷跡』
西村京太郎
江戸川乱歩賞全集(6)天使の傷痕 殺人の棋譜 (講談社文庫)


武蔵野の雑木林でデート中の男女が殺人事件に遭遇した。瀕死の被害者は
「テン」とつぶやいて息をひきとった。意味不明の「テン」とは何を指す
のか。デート中、直接事件を目撃した田島は新聞記者らしい関心から周辺
を洗う。「テン」とは天使と分ったが、事件の背景には意外な事実が隠れ
ていた。

昭和40年、第11回江戸川乱歩賞受賞作です。
最近ずっと本格ミステリを問うかのようなミステリや叙述トリックものを
読んでいたのでこのようなオードドックスなスタイルの作品は久々かも。
トラベル・ミステリーで有名な方ですがそちらは読んだことがなく、それ
以前の作品は何作か読んでいますが優れたミステリ作家だと思います。

さて本作ですが犯人あてミステリでありますが、その後の犯行動機解明に
おいて社会派ミステリとしてのテーマが出てきます。
このテーマは重い内容であるものの真犯人の二人目の殺人は全く身勝手だ
し、それを裁判でなんとか軽くさせようと考える主人公のあり方など結構
問題です。そんな人が最終的に使命感溢れるかのような行動を起こすのは
登場人物にも言われているように所詮他人事のような気もしました。

ってこの他人事、というのも実はテーマに含まれているんだなあ。

真犯人が浮かび上がってくる過程など地味ながらやはり本格。
良かったです。

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天女の末裔/放課後

江戸川乱歩賞全集(15)天女の末裔 放課後 (講談社文庫)
江戸川乱歩賞全集(15)天女の末裔 放課後 (講談社文庫)

『天女の末裔/放課後』
毎度御馴染み江戸川乱歩賞全集です。
第30回(昭和59年)受賞の鳥井架南子「天女の末裔」
第31回(昭和60年)受賞の東野圭吾「放課後」を収録しています。

「天女の末裔」

神様の祟りを恐れる山村で、23年の時を経て再び起きた不可解な転落死事件。
2人の男女が、自らも窮地に追い込まれながら真相に迫る。

神様の祟りを恐れる山村、巫女、信仰こんなフレーズで期待大でした。
私好みの味付けでありながら著者が云うように
”俗信などの非合理的思考を、少し別の視点で書いてみたかった”
というこの物語はすごく面白かった。


「放課後」

女子高の更衣室で男性教師が毒殺された。さらに、体育祭の真っ最中に
第二の殺人が発生した。女生徒の誘惑と巧妙なトリックが渦巻く傑作。

こちらは女子高を舞台にした現代の作品です。
東野さんの作品を全て読んでいる分けではありませんが
トリックとエンターテインメントの部分のバランスがやはり東野作品
という気がしました。
ラストの部分は不要との見解もいろいろあったようですが強烈です。

さてこの江戸川乱歩賞全集。2作収録でお買い得です。
とりあえず全部欲しい。

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剣の道殺人事件

江戸川乱歩賞全集(18)剣の道殺人事件 フェニックスの弔鐘 (講談社文庫)江戸川乱歩賞全集(18)剣の道殺人事件 フェニックスの弔鐘 (講談社文庫)
(2005/09/15)
鳥羽 亮、阿部 陽一 他

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『剣の道殺人事件』
第36回江戸川乱歩賞受賞作。(1990年)

眼の壁に囲まれた密室―。
衆人環視の中での殺人事件は、両国N大講堂で開催された
全日本学生剣道大会の決勝戦で発生した。

という事で試合中での殺人事件であり
ここはとんでもないバカミスになるかと思いきや(誰も思わないか)
真っ当というか地味なトリックのミステリです。

このトリック部分は若干の肩透かしがあるにせよ
極めてオーソドックスな犯人探しかつ動機探しの作品です。

未読ですが同年同時受賞作が海外諜報モノの『フェニックスの弔鐘』で、
これは”推理小説”の範疇を飛び出した作品だそうで
対して『剣の道~』は従来の推理小説フォーマットに沿った作品であり
このダブル受賞には
今後の推理小説のあり方を問う意味合いもあったようです。

剣道に真摯に打ち込む大学生たちが登場人物ですが
結構、道から踏み出したものもいるようで。
動機はなかなか重く業が深いです。

↓オーソドックスによろしくお願いします。
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浅草エノケン一座の嵐

江戸川乱歩賞全集(17)白色の残像 浅草エノケン一座の嵐 (講談社文庫)江戸川乱歩賞全集(17)白色の残像 浅草エノケン一座の嵐 (講談社文庫)
(2004/09/14)
坂本 光一、長坂 秀佳 他

商品詳細を見る


『浅草エノケン一座の嵐』
第34回江戸川乱歩賞受賞作。(1988年)

浅草喜劇王エノケンを主役にしたミステリーです。
殺されるのは別の”エノケン”。
エノケンは容疑者にされてしまいます。

本作は昭和初期の浅草の軽演劇周辺を舞台ですが
ここで紹介されるエノケンやもうひとりの”エノケン”の
舞台や芸のレビューが楽しい。

へえ当時こんな演劇やっていたのかー、などと感心してしまいましたが
実はここら辺作者の創作によるものが多いようです。

実にいきいきと描かれていて
一度見てみたいなー、と思ってしまいました。

さて乱歩賞受賞ミステリとしてはどうかというと
以下ウィキぺディアより。

その選評はあまりに辛辣なものが多く問題となった。
批判の是非はともかく、ここまで貶しておいて授賞し、
同じ本にそれを収録するのは失礼ではないかとの指摘もあり、
その後『エノケン』を最後に単行本への乱歩賞受賞作の選評掲載は
10年間に亘ってとりやめとなった。

逆に興味をそそられるでしょう。

講談社文庫江戸川乱歩賞全集ではバッチリ選評も載っています。

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